コンビニバイト、面接

アルバイト予定のコンビニは、原付を走らせて10分もかからない場所にあった。

田舎のコンビニの駐車場はやたらと広く、どこに停めたらいいのかを聞いてなかったななんて思いながら、私は店のすぐ横のスペースに原付を停めた。

ストッパーを立ててスマホで時間を確認する、面接予定の十分前だった。

店の中を見るとそれほど客は入っていなさそうで、この時間が客が少なくて楽な時間帯なんだなと思った。

楽して金がもらえればそれに越したことは無いなんてことも考えながら。

店の中に入ってすぐに、レジに立っていた店員の一人に事情を話す。

今日アルバイトの面接予定だということ、そしてどうやらその話はその店員にも通っていたらしかった。

店長はまだ来ていないという。

え、あ、ひょっとして時間早すぎましたかね

いえ、店長が遅れているだけかと

ひょっとして自分がおかしいのかと、そう思って放った言葉はバッサリと切り捨てられた。

その店員は私に『とにかく待っていてくれ』と言い、バックヤードのほうへと案内してくれた。

何の用意もされていない、乱雑さだけが目立つ仕事場所が広がっていた。

壁にパソコンが供えられ、足元には廃棄らしきものが入ったかご、あとはロッカーと天井から何かつり下がっていた。

バックヤード内を見渡していると、案内してくれた店員はどこから持ってきたのかパイプ椅子も用意してくれた。

そして待つこと20分

すみません、ちょっと遅れてしまいました

あ、いえ、大丈夫ですよ、大変ですねー

心の中で、ちょっととは一体という言葉が出てきたが、それをそのまま出すほど俗世の人間でもない。

それじゃ面接始めますね

この時点で私は強烈に帰りたくなった。

遅れた理由も説明なし、待たせてすみませんの一言だけ、ちょっとくらい会話ができるかと思えばそれも蔑ろにされる。

だけどここ以外のどこにバイトがあるのだろうか。

数が限られているのだと思えば、選択肢はないに等しい。

たとえどんなに店長がやばかろうとも、私はこの店長に気に入られなければならない、そんな心持ちだった。

心の隅では『頼むおれを落としてくれ』という叫びも聞こえてきていた気がしたが、聞こえない振りをした。

希望する時間帯は

特にないです、働ければいいですから。できれば割り増し時間帯に入ればいいかなと思ってます

あれ、学生さんだよね、学校は

ここで去年に事故を起こしたこと、去年の単位は全部取っていたこと。

そして留年した原因の試験は今年はなくなったので実質無条件で進級できることを説明した。

はあ、そういうことですかあ、夜時間とかは覚えなきゃいけないこととかたくさんあるんで、最初からは無理かなあ

わかりました、まあとりあえず、自分は大体どんな時間でも働けるという感じです、まあ勉強しなきゃいけないんですけどね

ここで笑いながら言った言葉も、相手は全く聞いていない様子だった。

わかりました、それではいつごろから働けますか

残念なことに働くことが決定した。

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バイトの説明があった、働くコンビニは自分がその時いた店だけではなく全部で三件あるという話。

その三つをその日決められた店舗に向かってくれという事だった。

交通費って出るんですか

一番離れた店舗まで車でも30分以上かかりそうに見えた。

一瞬店長のいやそうな顔が見えたのを私は見逃さなかった。

いえ、あの、その代わりにこの店舗まで来てもらえれば、私が空いているときは車で送り迎えしますので

つまり交通費を払う気は一切ないというのが分かった。

私は諦めた、何よりこの店長の事が何も好きになれそうになかった。

だったら自分で原付を走らせていくと。

それでは話は以上です、では明後日の15時に、この店に来られますか

私の初コンビニ出勤が決まった。レジや通常業務を覚えてもらうということで、最初は比較的手が空きやすい店舗で練習をしましょうということだった。

私は家を出る前にネットで少し調べていた、コンビニはビデオ研修みたいなものがあるから、仕事の内容的には分からなくなることはまずないと。

だがここまで来て、ビデオ研修のビの字も私には見えていない、それが不安を更に煽っていた。

わかりました、よろしくお願いします

私がそういうと店長は手を差し伸べてきた、正直握りたくなかったがそこで変な確執を生んでもしょうがないと、私は握った。

目を見ると店長はこちらを向いてはいるが、どこか違う場所を見ているようなそんな雰囲気があった。

目が合っているはずなのに、何か別のものを見ているかのような。

(今からでもやめにできないかな)

そう思ったが、私は諦めて働くことに、なってしまった。

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